サイトマップ | 更新停止のご案内 | このサイトについて


   

八月三日(縦走八日目) 
両俣小屋〜横川岳〜仙丈岳〜北沢長衛小屋

 僕の足は、ガラスの足です。重荷を背負うと決まって筋を伸ばしてしまい ます。筋を伸ばしてしまったらもう歩けない。あとは下山するしかありま せん。これで、僕は一体何度山で泣いたことだろう。

苦しければ、耐えればいい。痛ければ、耐えればいい。

でも、痛めてしまった足で歩き続けることはできません。その、「足を痛 めた」は、苦しみとは無関係にやってくるのです。調子よく歩いている筈 なのに、ある日激痛がやってくる。志なかばで下山する悲しみを、何と表 現したらよいだろう。

 筋を温存できるかどうかは、この山行の成否を左右します。その筋に、昨 日あたりから少し痛みが出ています。あとはもう、とにかくかばうしかな いのです。そっと、足にダメージを与えないように歩いていきます。

 今日はそんなにしんどくない行程の日です。四時すぎにテントを撤収して、 ヘッドライトをつけて野呂川越へ向かって歩きます。ちょっと踏み跡が錯綜して道を発見するのに苦労しま す。道が登りに転じればあとは道ははっきりしており特に迷いもせずに黙々 と一時間の急な登り。あとは稜線伝いにいくのですが、仙塩 尾根は別名バカ尾根と言われる位で変化がありません。登りは単調ですが、植生の移り変わりで標高を稼いでいることを知ります。高望池を すぎたあたりで一回ルートをロストし、二〇分のタイムロスを経て伊那荒 倉岳を踏みました。このあたりがピークだろ うと勘付けて行かないと見落とすくらい小さな道標です。
 苳ノ平付近で仙 丈方面からやってきた人とすれ違ったのですが、子連れ…仙塩尾根を歩く 子連れですか。まったく凄いものです。仙塩尾根は難易度が高いわけではないですが、距離が長く、しかも主要なピークと絡めるのが難しいルート。大人でも歩いた経験があれば話のタネになるくらいのルートです。

 二七五五あたりで森林限界の上に出ると、今日も一面真っ白です。とにか く今日は歩くしかありません。大仙丈まであがります。目の前には霧の中に亡霊のように仙丈ケ岳が見えています。南アルプスの女王と言われる仙丈ケ岳が、今日は亡霊ですか…。たしかここから仙丈 の間が、左側が切れ落ちた注意しないといけない所だったんだよな…と思っ たのですが、この区間、想像よりずっと楽でした。思ったほどの苦もなく 仙丈ケ岳の山頂へやってきます。展望があれば、仙丈ケ岳というのはカールに包まれたやさしい雰囲気の美しい山です。でも、今日は全く展望はありません。時折カー ル下の仙丈小屋が見えるか見えないかくらいで、他の山はいっこうに見え てくる気配もありません。この一角に陣取って、待つこと一時間半。入れ替わり立ち代り人が行きかいます。相方 はようやくやってきました。が、かなり疲労しているらしく、今日は仙丈 小屋に泊まるとのこと。僕はテントの張れる北沢峠までは下るので、あと は先へ行くだけです。小仙丈をこえるとすぐ樹林帯に変わります。少し左 足をかばって、北沢峠へ足を進めます。舗装こそされていませんが、久々 に見る車道をこえて五分。北沢長衛小屋へきてみると…すげえ。テントが ざっと数えて、五〇張り近く張られています(あとで聞いた話によると小 屋泊まりだったのは四、五人だったそうです。小屋よりテント場の方が混んでる場 所なんて、僕は前代未聞だよ)

 さて、精進明け…ちがった、休肝日明けで今日は心おきなくビールが飲め ます。北沢峠は車で入ることのできる場所なのでビールも安い。が、ここ の自販機はひどすぎる。新五〇〇円玉は受け付けません。新一〇〇〇円札 は受け付けません。しかも一〇〇〇円札受け入れ停止中。そんなに都合よ く旧五〇〇円玉なんて持っていません。一〇〇円玉五枚はさっきテントの受 付をするときに使ってしまいました。仕方がないので一旦は引き下がりま すが、俺ってやっぱりバカかも…小屋番に頼んで自販機あけてビール一本 取り出してもらいました。そこまでして飲みたいかね…

*コースガイド

 仙塩尾根は少ないですが歩く人は確実にいます。ふみ跡もまま明瞭ですの であまり心配する必要はないでしょう。大仙丈〜仙丈ケ岳間の、片側がき れ落ちている部分だけ注意が必要です。仙丈ケ岳をこえてしまえば、あと は標高の高いハイキングコースですから、天気だけ心配していれば大丈夫 でしょう。
この周辺の小屋の入れ込みはどこも多く、特に馬の背ヒュッテの混雑度は すさまじいものがあります。ほんのちょっとの荷物の重さを我慢して、自 炊小屋である藪沢小屋に泊まるのが僕は一番おすすめではないかと思いま すが、基本的にはこの周辺の山域にシーズン中に近づくこと自体がおすす めできないように思います。

 仙丈小屋には水場もあり、予約なしでも泊めてくれたそうですが、この周 辺の小屋は予約していった方が安全です。藪沢小屋のわきには大量に水が 流れていますが、あとは北沢長衛小屋が水場になります。たぶん一番皆さ んが知りたいであろう、高望池の水場の状況は不明です。

区切り線
写真 えっと、多分大仙丈ヶ岳の亡霊だと思います
写真 大仙丈ヶ岳へやってまいりました
写真 仙丈ヶ岳には南アルプス市の新しい道標が整備されました。
写真 えっと、こちらが北沢峠のテント場です。中央左のいちばんちっこいテントが僕の。ここへくるとみんなテントが大きくて嫌なんだな…


最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php




mixiチェック

mailto:mailaddress

tozan.net - http://tozan.net