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八月十九日(縦走二十四日目) 
種池〜爺ヶ岳〜冷池山荘〜布引山〜鹿島槍ヶ岳〜キレット小屋

 本日宿泊予定のキレット小屋には水がないので、昨日種池で四Lの水をわけてもらった。 有料の水ですが、水の ない所へ行くのだから仕方ない。背負えるだけ持って出発します。今日は少し荷物が 重くなります。
 朝は四時半くらいに出発します。小屋の前を通過して、爺が岳へ向かう斜面 に取り付いてみると、団体さんが先行しています。多分、山頂でご来光を 見る腹づもりなのでしょう。爺が岳へは小一時間。山頂で、結局団体さん に追いついてしまいました。で、結果はというと、残念ながら日の出には 間に合いませんでした。多分もう一〇分位早く出ていれば間に合った可能 性が高そうです。
爺が岳の山頂からは、妙高や火打、戸隠といった山々を見ることができま した。しかし、すぐガスは上がってきて、下々の山々は見ることができな くなります。

 爺が岳からは少し下って、冷池山荘の直前で樹林帯に入ります。冷池山荘 の正面の一段上がったところからは鹿島槍が見えるのですが、あいにく鹿 島槍の山頂はガスの中に隠れているようです。
 冷池山荘の前でザックを下ろして、コロボックルヒュッテで食べられなかっ たケーキセットを頼んでみよう、と思ったのですが、再び時間が時間です ので攻撃です。受付には誰もおらず、何か頼むのは不可能そうな感じでし た。仕方なくトイレだけ借りてそのまま歩き出します。
 冷池山荘のテント場までは徒歩八分。テント場は一段上がったところにあっ て、確か展望もなかなかだった記憶があります。でもこの日は何も見えな かったように思いました。テント場をこえるとハイマツ帯にかわって、一 時間少々で布引山です。携帯電話を取り出して振ってみると、アンテナが 立つところがありました。下界へ連絡を入れます。そして、周囲を見渡す と、剱岳がよく見えています。さらにその右手に目を転ずると−日本海が 見えました!ついにゴールをこの目で見ることができたのです。まだだい ぶ遠いですが、少し感激します。あとはゴールに向かって一目散です。
 布引山から鹿島槍ヶ岳までは小一時間の登りです。冷池山荘の少し下の鞍 部が二三八七で山頂が二八八九ですので、だいたい標高差で五〇〇m位あ ります。でも、こんなものは南アルプスの激しいアップダウンをこえてき た僕にはもののうちに入りません。軽々と登って登頂です。でも、多分普 通の人が歩いたらそこそこしんどいのだろうと思います。もしかして、昨 日のビールがまだ残っていて酒POWERしているのかもしれません。

 さて、鹿島槍で早くも昼食にします。実はここまでくる間にすでに行動食 は食べつくして、もうおなかが減ってきているのです。底なしの胃袋はと どまるところを知らない状況になってきました。本当は冷池でケーキセッ トを食べて、あわよくばチョコレートも買っちゃえ、と思っていたのです が、誰もいなくて食いっぱぐれてしまいました。少し風があるのでザック を風避けにして火をおこします。
ぐるっと目を周囲に転じると、結構人はいっぱいいます。が、みんなここ まで軽荷でやってきて、ここから冷池の方に帰る人ばかりのようです。 目の前にサングラスかけたおじさんが座っています。なにかこっちを見て いるような気もしますが気のせいでしょう。きっとあの人も、鹿島槍を往 復して冷池方面に帰ります。ま、知らなかったことにしておきましょう。

 やがて、腰にザイルを巻いたおばあさん団体がやってきます。ひい、ふう、 みい、えっと、十四?どうやら十四人のようです。この団体、昨日キレッ ト小屋に泊まって今日八峰のキレットをこえてきた様子なのです。よかっ たよ昨日キレット小屋に泊まらなくて、と、声に出しては言えないので心 の中でつぶやきました。

 キレットは、二〇〇一年の八月に一度こえています。そのときは、五竜で 一泊して、翌日キレットをこえて冷池泊まりと逆コースを歩きました。で も、あんまり記憶に残っていないのです。ただざれた斜面の下りがしんど かった覚えはありますが、ザイルで結び合うほど危険なところなんか、全 然なかったように記憶しています。

 一応キレットに敬意を表して、ここでストックをザックに括り付けて片付 けます。で、スタートするのですが、しばらくはストックがあった方が楽 でした…とにかく、北峰との分岐あたりまでは、あまり手を使うようなと ころもなく、割と軽々といきます。体を支えるのに手をつこうと思うと、 岩は結構下の方なのでかなり腰をかがめないといけません。
 北峰を過ぎると時折片側が切れ落ちたところが出てきますが、まあ、普通 の縦走路という感じです。ここで一グループやりすごして、目の前に登場 したのがインターネット仲間のロビンさん。えっこんなところで何をやっ てるの?えっキレット越えの縦走だったんですか?そうですかそうですか。 ロビンさんもキレットを越えられるくらいまで成長したのですか。よかっ たよかった。ところで、富士山行くって言って入会してきたんだよね。ま だ行ってないみたいだけど、富士山はどうなったの?
 で、うーんあんまり怖いところないな、と思っていると、小屋まで二〇分 慎重にとか何とか書かれた札が出てきます。ここからが八峰キレットのは じまりです。でも…確かに足元は切れ落ちているんだけど、ケミカルアン カーの鎖がびっしり張り巡らされていますので、手を離さなければ落ちよ うがありません。たしかにここを通過した記憶はありますが、しんどかっ た記憶はありませんので、まあ、余程ヘマをしなければ別段恐れるに足ら ない、と言っていいでしょう。もう少し先へ行ったところの鎖場の方が怖 いくらいの感じです。

 この日の行程で、何といっても知りたいのは八峰キレットの状況でしょう。 結論から言えば、たいしたことはありません。でも、この言葉には何の意味 もありません。越えた人はたいしたことないって言うし、越える途中でおっ こって死んでしまった人は何も語ってはくれないからです。
 難易度としては、ちょっとしんどい目な鎖場が、長く続く程度のものと考え てください。だいたい槍の穂先に登れた人なら、まず十分対応可能な難易度 です。ただ、穂先と違って距離が長いから緊張感が途切れないように注意す る、といった感じだと思います。
 この区間は、左か右(もしくは両方)が切れ落ちているところは結構ありま すが、こういうところは多分よほどヘマをしないと落ちないと思います。で、 鎖はついていません。八峰キレット核心部(小屋の手前二〇分くらいのとこ ろ)はちょっと危ない感じがしますが、ケミカルアンカーで信頼に足る鎖が しっかり取り付けられています。この間へ入る前にちょっと一休みして、で、 ゆっくり行きましょう。ハシゴをこえて、横の鎖のトラバースをこえてしま えば少し楽になります。でも、楽になったところが落とし穴ですから、小屋 までは緊張感を切らさないように。鎖のついているところは、手を離さなけ れば落ちることはありませんが手を離したときにすべれば最悪の結果です。 かならずどちらかの手が鎖を握っているように注意したいものです。

 さて、キレット小屋は岩峰を回りこんではじめて見える、と書いてあり、 確かにそうなのですが、発電機の音が聞こえてくるので小屋が近いことを 知ることができます。小屋のすぐ裏手まで鎖が続き、慎重に下ったところ で小屋へ到着です。小屋へ入って、とりあえずコーラを頼みます。宿泊が 八八〇〇円で、コーラが四〇〇円。一万円札を出したら、千円札が一枚も かえってきませんでした。何か悲しい思いをします。
 八峰をこえるとき、一つ思案したことがあります。五竜岳から鹿島槍まで 歩いてキレットをこえたときは、五竜の下りから八峰をこえて鹿島槍まで ほとんど気が抜けるところがなく、気疲れしてしまった記憶があるのです。 今回はさらに重荷を抱えてのキレット越え。一気に行くにはしんどいでしょ う。従って、中間のキレット小屋で一泊して、この間の行程を二日に分散 させて神経の消耗を減らそうという狙いがあります。それでキレット小屋 泊まりなのです。
 で、行動用の水は食堂で無料でお配りしていますのでとか何とか言い出し た。おいこら。水がないっていうから種池から有料の水をしこたま持って きたんだぞ。こっちはお金払ってわざわざ重い思いをしているのに、無料 で水を配ってるとは何事だ。
 受付の隣が自炊室で、いったんここで休憩に入ります。先客は二名で、あ れ?一人はさっき鹿島槍で会ったサングラスのおじさんです。へえキレッ ト越えだったんだあ。冷池から鹿島槍往復だけなのかと思ったよ。僕はす でに宿泊の受付をしましたからここ泊まりは確定なんですけど、このおじ さん五竜まで行くという。一二時に出れば五竜山荘に四時には着くとか言っ ています。外は大ガスで何の展望もありません。今日も天気が持たない可 能性が大です。うーんそういう判断もありなのかなと思って傍観に徹しま すが、どうやら予定通り出発したようです。
 隣で荷物を広げていた団体から、ふたたびお弁当のプレゼントです。また 食べきれないから、持って帰ってもゴミになるし、とか言って僕の所に回っ てきました。目がキラキラと輝いてしまいます。さっき頼んだカップラー メンを片手にお弁当をたいらげます。結構おなかが一杯になりました。うー ん、今日はなんていい日なんだ。ありがとうごちそうさまでした。

 少し落ち着いたところで、もう一人の人と、割り振られた部屋に荷物を上 げにいきます。僕の割り振られたのは、蚕棚の二階部分。大きい荷物をよっ こいしょと二階に上げて場所の確保です。このおじさんはどうやら百名山 ハンター。今回は五竜と鹿島槍をやっつけるプランらしく、二つのピーク が踏めればキレットがどうこうというのはあまり関係ないようです。まだ 南アルプスは一つも登ってないようで、僕が十四日かけて南アルプス全山 をやった話をした時には、十四日間で南アルプスの百名山全部踏めるのか、 としきりに関心を持っていた様子です。
 でも、十四日間、歩きとおすというのは、いくら小屋泊まりでやろうとも そう簡単にできることではありません。そこのところが理解してもらえた のか、イマイチ疑問でした。どうも百名山ハンターと話をしていると、話 すことはだいたい一緒だし、なんか歯車が合わなくて疲れてしまいます。 そして、しばらく待っていると、さっきのサングラスのおじさん、帰って きました。これから雷がくると天気予報で言ってたらしく、それで戻って きたようです。多分いい判断でしょう。実際にはこの後は雷雨がくるどこ ろか割と天気は回復傾向で、夕方ちらっと小屋の中から剱岳が見えるくら いでした。 しかし、こういった不安定な天候の場合、多分天気が持つかどうかは結果 論で、昼過ぎの遅い時間には行動しないよう心がけるのが正解でしょう。 でもって、キャラメルとビスケットを頂きました。まさに乞食状態です。 何か鹿島槍の山頂でボロボロな服を着た人がいたからこの人何なんだろう と思ったけど、まさか二〇日以上も山にいるとは思わなかった、だそうです。

 そして、待ちにまった夕食タイムがやってまいりました。こんな場所の小 屋ですが、結構な入れ込みです。ろくに人とすれ違った記憶のないキレッ ト、こんなに大勢の人が越えているなんてにわかには信じられない位いま す。で、食事は二回戦です。僕は受付が早かったので一回目の番です。
 さー食うぞ〜食うぞ〜食うぞ〜。いきなりご飯盛りまくりです。一杯、二 杯、三杯、と食べて、おひつお代わりです。そして、お代わりしたおひつ も空になったら、隣のテーブルまでごはんをもらいに行きます。結局、夕 食はご飯六膳。さっきお弁当も食べましたから、さすがにおなかいっぱい になりました。


*コースガイド


本文で書いたとおりザイルで結んだパーティもいましたが、間違いなくザイ ルが必要な難易度ではありません。このパーティもスワミベルトで結んでま したから、滑落の場合の対処、というよりも、心理的安心感を求めた程度の ものだったと推察されます。
すれ違いは、この区間を歩いている人はそんなに多くないので度々あるとい うことはないと思いますが、場所が八峰ですから、多少時間がかかってもちょっ と戻ったり少し手前で待ったりして、安全な場所ですれ違うようにすると気 をつけたいものです。

種池から鹿島槍までの区間には、特に危険なところも迷いやすいところもあ りません。アルプス入門の一山としても手ごろでいいでしょう。

区切り線
写真 鹿島槍の山頂へやってきました。いよいよキレットへ踏み込みます
写真 これで写真の向きはあってます。丸太のところを足がかりにして向こう側へ行きます。写真では判別しにくいですが鎖がついていますので、ここは安心な方でしょう。
写真 はい、今日もごちそうさまでした。おいしかったです。さて、僕は何を食べたでしょう。想像して下さい。食事前の、盛り付けられた写真のっけちゃうと、あああの小屋はあれが出るんだってわかっちゃうからねえ。山行を歪めることにもなりかねないし。まあ、その辺は個々の人の考えにもよりますが、僕は公開しません。


最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php




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