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八月二十一日(縦走二十六日目) 
八方信号先〜猿倉〜小日向のコル〜白馬鑓温泉

 街中の路上テントですから、朝はぐずぐずしてはいられません。朝三時す ぎには出発です。今日から新しい地図。最後のゴールが書かれた白馬岳の 図葉にはいりました。これが最後の地図です。いよいよゴールは間近です。 しばらくは歩道のある道路歩きですが、まもなく林道に変わります。左手 の日帰り入浴施設でコーラを一本買います。次にコーラを飲めるのは、多 分ゴールした後です。さらば下界。
林道に変わる頃には少しづつ明るくなってきました。正面には樹林ごしに アルプスの高い山が見えてまいりました。おそらく、あれが白馬岳でしょ う。おびなたの湯を過ぎて、左手をふと見たら月が煌々と照っておりまし た。満月のようです。

綺麗な朝だ。

 二俣の発電所を後にして、単調な林道を歩いていきます。いつしか日が上 がって、通る車の数も多くなりました。
 ほどなくして、車がとまります。乗っていかない?うん、乗っていきたい のはやまやまなんだけど、歩くのがルールだから、ここは歩きます。ハイ さようなら。交通機関を使うつもりなら、すぐ手前のバス停から、五分後 に出るバスに乗ってますって。
 ふもとのペンションの車でした。まあ、そういう所から常連がついたりす る可能性もありますが、ペンションの車で止まるなんて、珍しいと感じま した。
 そうだな。やはり、麓のペンションに泊まって、猿倉まで送迎してもらっ て、猿倉から大雪渓登って、最後は白馬山荘に泊まるのが、常識人の山登 りってものだな。八方から歩いて猿倉へ行くのなんか、バカチンのやるこ とだ。第一、登山口までの舗装道路歩きなんか、登山でもなんでもないじゃ ないか。俺は何をやってるんだ。なんてバカなんだ。バカ、バカ…

 なんて、くだらないことを考えているうちにバスに追い越されました。あ まり人は乗っていなかったようです。
 そして、すぐに次の車が止まります。だから、僕は猿倉まで歩くの。いい から行ってください。そうじゃなくて、えーっと、猿倉はこの先ですか? はあ?なんで僕に聞くの?だって、道路標識に、この先白馬岳って出てる じゃないですか。はいそうですよ。猿倉まではそんなに遠くありません。 どうせあんたも大雪渓登るんでしょうに。頑張ってねサヨウナラ。あーもー、 暑いのにこんなバカなことやってて、イライラするな。

 思ったより余裕をもって猿倉荘に到着です。バスで三〇分の距離。まあ、 一〇キロか一五キロ位はあるでしょう。登りですから四時間は少なくともかかるかな、 と思ったのですが、歩いてみればわずか二時間三〇分。なんでもない距離 でした。
 猿倉荘は、下界の登山基地状態です。まあ、一夜に三〇〇〇人を迎える山 小屋があって、ほとんどの人はここから登るのですから、確かに登山基地 には違いません。ヤマケイのゴミ回収キャンペーンと、それから山岳警備 隊がここまで出ばってきて登山届の受付をやっている。ひそかにヤマケイ のゴミキャンペーンに紛れてバンダナをくすねてこようと思ったのですが、 バンダナ一枚にも重さがあります。バンダナを貰っていこうという思いは あっけなく崩れていきます。ヤマケイさんにさようならして隣へ移動。ま ずは登山届を書くことにします。自前で用紙を持ってきて書いてあるので すが、用紙が決まっているようなので、自前の登山届を見ながら書き写し ます。栂海新道へ行く人はほとんどいません。今日は一人なので気をつけ て行ってきてくださいとか言われました。ああ、白馬岳登山道崩落の影響 はこんなところにまで出ているのか…この年は大雪渓が崩落して、数人が土砂の下に埋まっているとのこと。大雪渓を登る人が減るのはいっこう に構わんが、周辺登山道の人口まで減ってしまうとは迂闊だった。

 のぼりは、僕はアイゼンを持っていないので、白馬鑓温泉経由で上がりま す。目の前でアイゼン、売ってるんですけど、ここでアイゼン買うのは反 則ですし、第一大雪渓は一度登ったことがある。一〇月に登ったのが悪い のだが、このルートはあまり感心するルートではなかった。その上、今年 は大雪渓で事故がおきていて、話を総合するとおろくさん(まだ確定した わけではないが)が埋まっている土砂を巻いて登っていくらしく、それは あまり気持ちよくないだろう。鑓温泉回りだと一日余計にかかるが、鑓温 泉へは行ってみたい。

 猿倉荘の中を覗いてみると、すごいです。ガスカートリッジは普通に扱っ ていて、EPIとプリムスと、それも普通のと寒冷地用のが選べます。す げえ。登山用品店みたいだ。でも、その位で驚いていてはいけません。ス トックにアイゼンにTシャツに、それから登山地図とガイドブックが数種 類づつ、あとはバンダナですか。それから、ゴアテックスの三万三千円も する雨具まで売ってました!こんなところで三万三千円のゴアテックス雨 具を買う人って、いったいどんな人なんだろう。よくわかりません。
 おみやげの類も扱っています。槍ヶ岳剱岳縦走のときのように、多少なり とも余力がある山行であればおみやげを買っていくところなのだが、今回 は残念ながら一gも荷物は増やしたくありません。ぐっとこらえておみや げは買わないことにします。

 で、今日はもうだいぶ歩いたのでおなかがすいてきました。メニューを見 ると、…下界の場末のそば屋みたいなメニューです。大したものはありま せんでした。その中に、ケーキセットを見つけたのです。コロボックルヒュッ テで食べそびれたケーキセット。よし、車山の仇はここでうつぞ。ケーキ セットください。えーっと、ケーキないんで…あわれ、玉砕です。仕方が ないのでカレーうどんを頼みます。なんかずいぶん違うジャンルの食べ物 を頼んだな。まあ、いいことにします。カレーうどん。
 カレーうどんをずぞぞぞぞ、とすすっていると、目の前に団体さんがやっ てきました。みんなで体操しています。微笑ましい限りです。
 まあ、体操までやるのは大層ですが、山へ登る前はストレッチは僕はやっ ておいた方がいいと思っているクチです。事故防止につながるかどうかは わかりませんけど、膝や腱の故障の予防には、ぜったい効果があるはずで す。僕も毎日ではありませんが、気づいたときには極力出発前にストレッ チは欠かさないようにしています。
 はい、カレーうどんごちそうさま。食器を返して、聞いた話によると、あ の団体、どうやら栂海新道を下るらしい。とてもそんな大きさの荷物には 見えなかったが、大丈夫なのか?避難小屋だからシュラフも要るし、自炊 道具も必要なんだけど、あの荷物の大きさはどう見ても大雪渓往復にしか 見えません。でも、今時の装備はみんな小さくて軽いからなあ。ありえな い話ではないだけに怖い。
 避難小屋であんなのと一緒になったら嫌だな、と思ったのですが、よくよ く考えてみれば、僕は鑓経由だから一日遅い。ああよかったと胸をなでお ろします。

 白馬の盛夏の喧騒は知りませんが、そこそこ人がやってきます。そうこう しているうちに次のバスも到着して、また人が増えました。人の流れを見 ているのはいいのですが、まだ僕も残り半分、コースタイム四時間四〇分 ぶんを歩かなくてはいけません。そろそろ出発することにします。
 階段状のほそい道を上がって、すぐ林道に出ます。林道へ入ったら二、三 分で←鑓温泉の標識が出てくるので、標識に従って左へ入ります。林道か ら見た限りではそんなに綺麗な登山道には見えなかったのですが、一段上 がると石畳のきれいに整備された登山道に変わります。でも、この石畳は 下りはしんどそうです。

 途中で、三人か四人くらいのグループが休んでいます。聞かれなければど こから来たかなんか言わないんですけど、たまたまそんな話になったんで すね。で、南アルプスから歩いてきた、って、言っちゃいました。その時 はそれっきりになるだろうと思ったのですが、追いつかれて追い越されて、 結局鑓温泉までほとんど同じペースで歩くことになってしまいました。

 間もなく小日向のコル、と呼ばれるところにやってきます。一段水平になっ たところなので、多分わかりやすいとは思います。道標が一本立っていま した。天気が良ければ左手に小ピークが見えるのではないかと思うのです が、樹林帯の間でしたし、ガスがかかってましたし、左手なんか気にして いなかったのでこのピークは確認しませんでした。その代わり、小湿原み たいにやっていたのは良く覚えています。

 ここからは、山腹を巻くようにして進んでいきます。地図をみると、白馬 鑓温泉には水場のマークが書かれていません。鑓温泉、温泉は出ているの に水はないんか?なんかちょっといぶかしげです。出ている水は全部温泉 で飲めないんやろうか。まあ、地図に水場のマークがないということは、 まず水は出ていないと踏んだ方が安全です。まして、その手前に水場のマー クが書いてあるということは、もう「ここで水を汲んでいきなさい」とい う地図作成者のメッセージとも読み取れます。地図上の水場の位置かどう かはよくわからなかったのですが、とにかく小日向のコルから三〇分くら い行った右手に水が出ていたので、ここで水を汲んでいくことにします。 三kg荷物が増えたところで、もう行動が制約されるほどは重さを感じる ことはありません。でも、三kgです。貴方の荷物に、三kgの重りを入 れた所を想像してください。やっぱり、嫌なものは嫌なのです。

 ほどなくして、轟音をたてて水が流れている場所にやってきます。左下の 方に、崩壊し終わった雪渓が残っています。橋がかかっていますが、橋の 上まで水しぶきがかかっています。地図を見ますと、どうやらここは杓子 沢のようです。水しぶきを浴びながら橋を渡ります。ほどなくして左手上 に鑓温泉の建物が見えてきました。が、結局鑓温泉まではこの場所から軽 く一時間以上かかります。砂礫の地面をトラバースして、お花畑の台地を 上へ上がったところに鑓温泉はありました。建物の下の段に足湯があって、 その向かい側がどうやらテント場のようです。ここにとりあえず荷物を放 り投げ、もう薄汚くなったタオルだけ持って小屋へ行って受付をします。 受付では「食事は必要ないですか?」とか聞かれます。えっ?テントの人 の食事って、聞かれるものだったんですか?北アルプスって、すげえとこ ろだ。でも丁重に断ります。でもって、さきほどのパーティはまだ到着し ないようですが、僕は早速お風呂に入らせてもらいます。

 鑓温泉の入浴料は三〇〇円で、幕営料が五〇〇円。都合八〇〇円です。小 屋に宿泊する人は入浴料が無料になります。鑓温泉の小屋は雪崩による崩 壊を防ぐため毎年シーズン前に建ててシーズン後には取り壊すそうです。 入山自体は一〇月くらいまでは大丈夫そうなのですが、雪が舞いはじめる と小屋を壊す作業もできなくなってしまうため、営業は九月一杯、とのこ とです。
 お風呂は、正面の湯船が、一応混浴ですが女性は入ってこないわな。で、 あと左手に女性用の囲いがしてあるお風呂が一つ(中がどんな風になって いるかは不明)と、上手に女性用の露天風呂が一つの都合三つとなってい ます。ただし、夜八〜九時の間は大きい露天が女性専用になり、女性用の 風呂が男性用になります。洗い場はありません(そもそも山の中なので石 鹸の類は使えないし)お湯はほんまものの源泉かけ流しで、加水もしてい ません。源泉温度は約四五度だそうです。年によっては熱すぎることもあ るそうですが、湯量が多すぎて加水で冷やすのは追いつかないそうです。 で、結果入れないということになります。

 丁度、お風呂に入ったところでくだんのパーティが上がってきました。風 呂から手を振ります。風呂からは登山道が丸見えです。

 今年の、という但し書きがつきますが、湯温は絶妙でした。長湯ができる 温度で、なおかつぬるさを全く感じません。こんなお湯にあたるのは滅多 にないことです。上がひらけている為温泉から蒸発する湿気がこもらない のも影響しているのかもしれません。温泉で長湯をしたのは、僕ははじめ てかもしれません。満足してあがって、湯上り、といえば、当然ビールで す。小屋へ戻ってビールにします。ええっまた飲むんですかあ?どうやら また飲むようです。
 それにしても、この小屋はなんかうるさいな。食事のときはアルコール禁 止とか書いてあるし、小屋へ入るときは荷物は外へ置いて入ってください とか書いてあるし、三時以降の下山は自粛してください、とか、ロープの 左側を通ることとか、なんか不統一な注意書きがあちこちに掲示してあり ます。温泉がいいだけに、気分は愉快ではありません。

 で、問題の水場ですが…小屋の裏手に水道がありました。ショックです。 また無駄な労働をしてしまった感が漂います。行動用の水は、種池でわけ てもらったのがまだ残っているのです。種池…ずいぶん遠いな。あんまり 何日も持っていると水が悪くなってしまいます。これは入れ替えることに します。

 で…小屋の前でビールを飲んでいたのですが、さきほどのパーティにお呼 ばれします。呼ばれてびっくり。向かい側にいたのは、朝、乗っていかな い?と声をかけてくれた人でした。あの時間に猿倉へ行くのですから、てっ きり大雪渓へ行ったものとばかり思っていました。美ヶ原から島々の間も 歩きましたよ、って言うと、声をかけたとき断ったので変な奴だなと思っ たが、それで合点がいったとか言っていました。そんなところも歩くなん てとんでもない山バカだとかなんとか言われますが、でも、美ヶ原と島々 の間の舗装道路歩きなんか山と何の関係もありません。単なる自己満足の 問題です。
 で、今日もしっかりおつまみごちそうになって、でもって一通り話し込ん だあとは再び温泉になだれこみます。でもって、湯上り、といえば、当然 ビールです。えっ!?さっき五〇〇缶全部飲んでたじゃん。まだ飲むの? うーん五〇〇にしようかな三五〇にしようかな。やっぱ五〇〇。あーあダ メだこりゃ。明日は休肝日だからな。

 でもって、夕食前にもう一回お風呂につかります。よほどこのお湯が気に 入ったようです。ま、何回入っても値段はおんなじだし、こんな大ガスで 展望のない日にお昼前に到着すれば、せいぜいお風呂に入る位しか楽しみ がないべさ。で、湯上り、といえば、当然ビールです。またビールかい。 …肝臓壊すなよ。再びいい気分になってビールを飲みます。

 さらに、夕食後にもう一回お風呂に入りにやってきました。で、湯上り、 といえば、当然ビールです …といいたいところなのですが、もうお金が ありません。さすがに今度はビールはやめておきます。って、こらっお金 の問題なのかい!飲みすぎだっちゅーの。

*コースガイド

白馬駅から猿倉まで、歩くとだいたい三時間〜四時間程度と思いますが、 この間を歩いている人は皆無です。こんなところを歩いていると登山者 からも奇異の目で見られることうけあいです。

猿倉荘にはトイレと水場があります。宿泊も可能なようですが、要予約 かどうかはわかりません。一応下界の宿ですので、予約した方が安全でしょ う。

猿倉から鑓温泉の間は、とくに危険なところはありません。が、下山時 に鑓温泉でお風呂入って、風呂あがりにビール飲んで酔っ払った状態で 歩くと、落ちるところはないと思いますが転ぶところは一杯ありますの で注意が必要です。鑓温泉から猿倉まで歩いたくらいの時間ではアルコー ルは抜けませんので、車運転する人はアルコールはなしでお願いします。

区切り線
写真 月が出ていました。
写真 猿倉荘の売店。すごいです。登山用品店並です。
写真 カレーうどんを食します。おなかすいたよう…
写真 こちらを渡ってきました
写真 お花畑の中を登って小屋へ向かいます
写真 お待たせしました〜鑓温泉の湯船です。若い女性が入っていないのでちょっと残念ですが、お湯はこんな感じです。


最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php




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