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八月二十六日(縦走三十一日目) 静岡駅=畑薙第一ダム

 チョンボといえばチョンボですが、静岡駅と畑薙の間はバスを使います。 現実にはこの八八キロの、何の面白みもない舗装道路を歩く手もありますが、 僕はすでに過去一回、この八八キロを歩いた経験があるし、第一こんな ところを四日もかけて歩いていては毎月通院しないといけない病院に間に合いません。ですので、この区間はバスを使うことにします。

 五時台のバスはすでに今シーズンの運行を終了しており、朝一のバスは八時八分発。朝おきて、通勤ラッシュがはじまるので荷物を片付けます。他 所のバスは朝から平常通り走っているみたいですが、問題は畑薙行きです。 なにしろ南アルプスの道路。直撃の台風の後ですから通行止になっていて もおかしくありません。本当にやってくるのか?と、最後の最後まで心配 しておりましたが、八時九分、畑薙行きのバスは路線バスではなく観光バ スの車体なのでバスターミナルに入ってくればすぐわかります。一分おく れてバスはやってきました。乗り込んだのは僕一人。バスはすぐに発車し ます。始発の新静岡から乗っていたのは二組三人で、乗客は都合四人。乗 務員は二名でとても採算がとれる状態ではありません。さすがにこの、も う山小屋も閉まろうかという時期になるとお客さんもさびしいものです。 だから畑薙行きのバスが一日二本とか三本とかなんだなあ。はっきりいっ て、南アルプス南部のアプローチは新幹線と静鉄バスが一番楽です。自分 で清水ICから一〇〇キロもセンターラインがあるかないかわからんよう な道路を運転していくのはしんどい。ぜひもっと使ってやってくださいよ。

 三時間もバスにのりっぱなしですので、バスの中では靴を脱いでリラック スです。なんとなく眠さを感じるのですが眠ることはできませんでした。 バスは静岡市内を抜けて北へ向かいます。川の水は茶色の濁流となってお り、大井川の清流のおもかげはありません。車窓は、僕が歩いた思い出が ある道路。熱射病になりかけて、コンビニで水を買ってひっかぶりました。 今日もまた台風一過の好天です。かつてテントを張った場所を、車はあっ という間に通り過ぎます。歩かなければ気づくことのなかった場所がそこ にはあります。
 井川駅を過ぎ、車が再び山の中へ入ってくると、路面は昨日の台風の影響 か大きく荒れてきます。料金の回収が済むと、何の変哲もないところでバ スは止まります。ここが新しくできた畑薙の駐車場らしい。東海フォレス トのマイクロバスはここから出発なので、バス乗り継ぎ組はここで下車と なる。終点畑薙第一ダムまで乗ったのは、結局僕一人でした。

 沼平まで少し車道を歩いて、ここから白樺温泉に向かいます。白樺の木が 一本立つ緑の草地が映える駐車場。ボロボロの建物がいい味を出していま す。宿泊はできず、入浴は無料です。お風呂は内湯で、しかもぬるい感じ でした。設備ももうボロボロです。ですが、久方ぶりのお風呂、ありがた みは十分ありました。
食堂がありますが、ちょっと高い印象です。窓は開け放し。エアコンはあ りません。食事をしていると、いい風が吹いてきました。高原の爽やかな 風。晩夏の風。

 下界ではもはや失われてしまった、美しい風。

 高い山の吹きすさぶ風は時としてしんどい思いをします。僕にはこの位が 合っているのかもしれません。

 僕はこれまで節操もなく山をやってきたけれど、今後どんな山をやってい けば良いのだろう。常日ごろから思い続けている悩みです。かつては、い つかは百名山という思いもあった。でも、その百名山も登り終えて、本当 に自由でソウルフルな登山が許されるようになった。
 内なる心の声に耳を傾けて、相変わらず節操のない登山を続けるのが、僕 の性なのか。今は、そうだな、高原のような山でお昼寝を決め込んでみた い。

 走り続けないといけないマグロとか言われている人間。そんなことできっ こないのに、でも心の中では何かゆっくりとした山を求めている自分がいた。

 気づいたときには、お皿は空になっていた。
 さて、それでは、行きますか――


*コースガイド

静岡駅から畑薙間は完全な舗装道路になり、海岸から九一キロ、静岡駅か らでも八八キロの距離があります。上助あたりまでは歩道がありますが、 その先は歩道もありません。当然、この区間を歩いている人は皆無です。 この区間は、いかにして水を補給して、いかにして足のダメージを増やさ ずいかにして宿泊場所を確保するか、がポイントになると思います。

静岡駅から一七キロ地点に健康センターがあり、宿泊が可能です。
二〇キロ地点付近左手にサークルKがあり、これが最後のコンビニになり ます。
しずはた北トンネルをこえたあたり左手に川へおりる通路があり、ここで 幕営が可能です。
上助バス停のわきに自動販売機があり水分補給が可能です。
上助バス停交差点を直進するとバス通りですが、右手口坂本経由で行った 場合、交差点から二〜三時間歩いたところに公衆トイレがあり、水道があ るので真水が補給可能です(自販機もあります)この場所にはテントを張 ることもできると思います。
もう少し行くと口坂本温泉の宿がありますが、営業しているかどうかは不 明です。
バス通り沿いにいった場合、富士見峠に幕営適地があるほか、富士見峠か ら一時間くらい歩いたところにキャンプ場があります。ただし、これも営 業しているかどうかは不明です。
井川駅の仮設トイレのわきに水道がありました。井川駅を少し上がったと ころに井川公園駐車場がありますので、ここで幕営可能でしょう。井川駅 をあがっていくと、順次簡易民宿、オートキャンプ場、民宿と出てきます が、この民宿を過ぎるとしばらくは何もありません。白樺荘で食事と水補 給ができますが、白樺荘は日中の短い時間だけ営業しています。畑薙ロッ ヂが最終の宿泊施設です。沼平でテントを張るのは可能でしょうが、水場 はありません。


最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php





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