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8月6日

この日目が覚めたのは午前4時前。まだ空は暗いが、北岳のシル エットは見えるようになっていた。天候は完全な快晴で、無数の 星空の下にいる。こちらから見る北岳は、広河原側から見る圧倒 的な量感と違い、細身で均整の取れた凛々しい姿である。僕自身 はどちらかといえば、こちらからの角度の方が好みである。

山頂へ続くヘッドライトの列が続いている。そのいくつかはもう 山頂付近までいっており、山頂まで1時間かかることを考えると、 3時過ぎにはもう彼等は出発していたのである。富士山以外でこ のようなご来光が見られていること、少なからず驚いたが、よく 考えてみればどの山であろうと美しいものは美しいのだ。
しばらくその様子を見ていたが、僕も空が白みはじめた4時半に は撤収。昨日の雨ですっかり濡れてしまったテントもシュラフも 乾かすことができず、とにかく詰め込むだけ詰め込んで、さらに 南へ向かうのだった。僕は昨日一旦テントを張ってから場所を移 したのだが、最初に張ったサイトは昨日の雨ですっかり水たまり になっていた。僕のところは全く問題なし。大正解であった。
15分位行くと一旦台地に出るが、そこにはすでにカメラを構え た人が。中判、というか、ほとんど大判に近いような蛇腹カメラ を構えている。その先は北岳と、そこから伸びる吊尾根。僕もこ のあたりで三脚を取り出し、移動しながら何か所かで撮影。日の 出は4時55分頃だが、移動しながらなので、この頃にはかなり 上まで上がっていた。北岳山荘の標高は地図を見る限り2880 m程度だから、中白峰まで200m程度の登り、そこから若干の 上り下りで第4位の高峰、間ノ岳まで行く。
天気も気分も上々だが、さすがに1時間40分というのは遠い。 朝いきなり早々、30分も歩かないうちに「あれが間ノ岳ですか?」 などと聞かれるが、「時間から言えば違うと思います」と答えて おいた。その峰は中白峰の手前の単なる無名ピークで、北岳山荘 から見ると確かに最も高い山に見えるのだが、そのピークに登っ てみると、その先に別のピークが隠れている、所謂ニセピークと いうやつだ。そして、その別のピークというのはまた中白峰であっ て、中白峰に上るとさらにその先の長い稜線と間ノ岳への登りが 見えてくるのだ。
稜線上若干右よりに特に危険のない岩稜帯を歩き、きっかり1時 間40分、午前6時に間ノ岳に登頂。これで今回の登山成功が確 定した。間ノ岳からはまさに360度の視界。間近の北岳のほか、 吊尾根の先に見えるオベリスクは鳳凰三山、北岳をはさんで反対 には白い岩肌の甲斐駒。意外と荒々しい山容の仙丈岳は反対から 見ると柔らかい曲線で構成されているのだろう。そして南には農 鳥岳と、これから向かう山々。次に向かう塩見の大きな山容と、 それまでに続く、緑多き稜線。さらに右へ回るとこれから小一時 間で登頂する三峰岳。中央アルプス方面の山と、遠方にはどう見 ても槍にしか見えない山が。そして、左には富士山。御嶽は中央 アルプスの一部かと思っていたが、中央アルプスの塊のなかでは なく、その奥のようだ。
一緒に登っていた方はこれから農鳥へ向かうそうだが、僕は三峰 岳方面へ向かう。右へ向きを変えると、いよいよ南アルプスの核 心。今までと違い歩く人も少ない尾根に入っていく。
・・・・と思ったら、いきなり人とすれ違い。まあ、そんなもん か。尤も、昨日までのように、先が詰まるほど人がいるわけでは なく、むしろ人影は疎らである。
三峰(みぶ)岳は標高にして2999m。その上に立てば目の高 さは3000mを超えるそうだが、惜しくも3000mを逃した 山は、遠くから見ると単なる間ノ岳のコブにしか見えない。間ノ 岳の量感が圧倒的すぎ、そのかたまり感に負けてしまっているの だ。従ってその標高にもかかわらず不遇の山に扱われている。私 自身も本日は先が長いので写真だけ撮って早々に退散。
間ノ岳は3189mなので三峰岳へは約220m下って30mの ぼる計算だ。
次に向かうのは熊ノ平キャンプ場。名前からしていかにも嫌な感 じだが、そのあたりは計算済みで、ちゃんと熊除け鈴も持ってき ている。標高は2550m前後なので約400mの下り。暫くは 石の上を歩くのだが、農鳥への巻き道と分岐したところから、ま ずハイマツ帯の中に入る。が、このハイマツが凄い。足元が見え ない位覆っているのである。なんとも、いかにも「歩かれていま せん」といった具合で、今まで歩いた登山道の中でも1、2を争 う登山道の細さだ。やがて、このハイマツは樹林に変わり、まだ 下りるんかい!と思い始めたころ、オレンジ色の花畑。痩せたコ ル過ぎ、木道を歩いたところでようやく熊ノ平へ到着する。
10時前頃着。まだ出発していないのか、早々に到着してすでに 宿泊モードに入っているのかはわからないが、数張りのテントが 存在。人影はまばらで、小屋の人も昼寝中。
現在の標高は約2500mなので間ノ岳からは2時間40分かけ て700mも下りてきた勘定だ。
肩の小屋からだとこのあたりで行程としては丁度いいが、北岳山 荘からだと若干短い。しかし熊の平と塩見小屋の間は6時間半、 丸々1日分の行程が離れている。小屋のないキャンプ地だと、北 荒川までは3時間、雪投沢までは約4時間。いずれも1日の行程 としては長めだが、熊ノ平あたりに宿泊していてはいつ南へ抜け るかわからないので、ここで先へ進んでおいて、本日の宿泊地は いずれかと定めた。まだ先は長いので、重量に気を使い若干少な めに水を補給。これが裏目に出るとは、このときはまったく予想 していなかった。
稜線へは50m程度の登り返し。ちょっときついかな、と思った が、さほどきつくはなく、再び樹林帯からハイマツ帯へ出て、ピー クを踏む。おそらく安倍荒倉岳であろう。気づかぬうちに通り過 ぎることが多い、と地図にはかかれているが、一応気づいたこと になる。尤も、きちんと特定しようとも思わず、三角点も探さな かった。昨日の雨でかなりぬかるんだ森の中をだらだらと歩き、 時折ちらちらと見える農鳥岳の高さに圧倒されながら、ずいぶん 下りてきたなあ、と思い切り感慨。小岩峰と思われるところ、新 蛇抜山と思われるところを通過。あまり上り下りはないが、距離 が長くてかなり疲れてしまった。一旦休憩に入るが、「塩見岳  5時間」の標識にうんざり。稜線も通らず展望も全くないなかを さらに2時間歩きつづけ、大登り登場。時間的にも地形的にいっ ても北荒川岳に近づいていることはわかっていたので、いよいよ 正念場だと思って頑張ると、意外とあっけなく北荒川岳の山頂へ 出た。確か北荒川岳を巻く道もあったはず・・・と思ったが、ま あ山頂へ出たのでよしとする。山頂では学生の団体が休憩中。北 荒川で泊まるか雪投沢まで行くか考えている、と言ったところ、 北荒川はもう5分位だし、雪投沢も1時間も頑張ればすぐですよ、 とのこと。って、1時間って相当だぞ。
北荒川はかなり細かい粒の砂で形成されており、西面は大崩れし ている。斜面には木がついているがなぜか山頂には木がいない。 大休止している僕をおいて彼等は先行。僕もそろそろ、と思って 北荒川キャンプ場へ向かうと、そこで再び一緒になったので、雪 投沢まで行くことにする。左巻きに崩れた部分を回るとやや広く なって、そこでテントを張る準備をしている人がいる。そこから 稜線を1分程度外れたところがテント場の管理小屋だ。小屋といっ ても畳2畳程度の、バス停の東屋より小さい小屋だ。
彼等はなんでそこで止まっていたかというと、実は水を汲んでい たのだった。そんなことは頭をかすめもしない僕は、これについ ていけばいいや、と思ってついていく。ここで雨登場。軽い雨だっ たので僕はそのまま無視したのだが、向かいからやってくる団体 さんは雨具をつけているらしい。って、お昼も回ったこの時間に まだ北荒川、ということは、これから2時間以上歩きつづけて熊 の平までいくつもりなのかい!いくらなんでも遅いんでないか? 雨は結局10分ほどでやみ、僕の勝ち。樹林帯の中にいた僕はほ とんど濡れることもなく、ガスに覆われた北俣岳への登りを登っ ていく。左のカールの中にテントが2張り張られているのが見え るが、塩見の肩にある北俣岳から伸びる稜線をかなり登らないと いけないようだ。あとで聞くと、この稜線を登るのは結構なアル バイトで相当苦しめられるそうだが、僕はそんなとも思わなかっ た。尤も、2日にわけて登るせいもあるが。
2719ピークを踏む頃には完全に雨が上がり、視界が開ける。 目の前に北俣岳の堂々とした勇姿。ここへと続くトレイルを踏ん での最後の一登りだ。稜線の左は大晴れ、右はガスの中。稜線を はさんでまったく天気が違うことは、山ではよくあることだが、 なんともいえない気分である。故塩見岳の本体は見られない。 カール内のハイマツを見ると、途中で分岐して左へ行く道がつい ているように見えたのだが、そこへの下り口がみあたらない。ど うやらそう見えただけで、実際にはちゃんとずるしないで上まで 登ってから下りなさい、ということらしい。
結局、かなり高い位置まで登って小ピークを1つ2つ踏み、最後 にがけに近いようなところを5分程度下って雪投沢に到着。ここ は管理小屋のないところなので、幕営も無料。結局この日は1円 もお金を使わずに過ごした。塩見岳直下のカールの中の気持ちの いいテント場である。そして見上げると北俣岳の勇姿。山頂まで の登りにちょっとめげ気味だが、すでに標高2700m近くまで 登り返しているので、北俣まで200m、塩見までも350m位 しかない。
カールの中なので遠くまで展望がきくわけではないが、2719 ピークが綺麗に見える。反対を向くと北俣岳。しばらく見ている と、ガスは稜線をこえてこちらへ下ってくるようだ。今日も天気 の悪化は避けられない様子。じきに雨がくるだろう。
さっさとテントを張って、水を汲みに・・・・あれ?水場は? はるか下の方で水の流れている音が聞こえているが、水場らしき ものがみあたらない。ちょっと下ってみるが、ここには廃道になっ た登山道の残骸が残っていて、あまり奥まで下るのは危険そうだっ た。・・・ということは、一晩水が手に入らない。まずい、中ピ ンチだ。手持ちの水が1.3Lあるので、それで凌ぐことにする。 500ccを行動用、500ccを夕食用に充て、念のため天水 を500cc集めて最悪行動用につかえるようとっておくことに した。具合良く3時には大雨がきて、かなり叩きつけるような状 況。雨水ゆえ綺麗ではないが、一応予定の500ccは確保した。 夕食には水の不要な行動食を含めてちょっと節約。
2時間半先の塩見小屋で水のほかにチョコレート3枚とライター を手に入れることを決める。ここまでくると塩気のあるものが食 べたくなるので、それとラーメンも。
学生さんは4時のラジオで天気図をとっているようだ。ほとんど 日本一帯が高気圧に覆われているようだが、ラジオは気になるこ とを言っている。台風が南台東島付近を接近中ーとのこと。12 時間以内の影響はないようなので、明日は行動できるとして、明 後日は沈。水場のない場所で停滞はできないから、小河内岳避難 小屋泊はまずい。行くとすれば三伏峠しか考えられない。明日の 目標地は、若干近いが三伏峠となった。それでも6時間近い歩行 である。2日連続の長距離だったので、いい休息になることだろ う。
食事が終わったらさっさと寝る。今日も夕日は見られなかった。 先は長いので、じきに見られることを期待。明日はいよいよ南ア の盟主、塩見岳だ。

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8月6日の写真

最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php




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