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19日 三伏峠ー悪沢岳ー中岳避難小屋 泊

朝、水を捨てた。これで、小河内泊まりはなくなった。高山裏にす るか中岳にするかは決めてないけど、とりあえず小河内泊まりはな くなった。あまりに近い、ということもあるのだが、やはり一番考 慮したのは小屋代。要するに河村さんとの関係は、4500円の小 屋代より安かった、ということだ。

今日から地図が変わる。北岳の地図から、聖岳の地図にもちかえて、 新しいステージのスタート。日程的には前半だけれども、これから 深い南の、南部へ入っていくのだと思うとまた改めて気が引き締ま るのである。
今日は4日目。登山ではよっかめ、と言って、毎日行動していると、 大なり小なりバテがくる日になる。その日に、南アきっての難所大 斜面越えが待っている。そして、今日中岳までいけば、当然今日悪 沢岳を踏むことになる。CT11時間近い、いちばんキツい行動に なる。

朝、1時半起き。2時45分に三伏峠をスタートしてヘッドライト で登ります。烏帽子岳や前小河内岳で写真撮影をし、5時すぎに小 河内岳の避難小屋へ。

小河内の避難小屋では毎年ジュースを買うので、今回も分岐に荷物 を置いて小屋に立ち寄ります。小屋には2人ほどいて、そのうち1 人が応対してくれたのだが、記憶にない人だった。
「小屋番変わったんですね。はじめましてよろしくおねがいします、 ジュースを飲ませてほしいんですけど」
とかあいさつすると、河村さんが奥から出てきた。ああやっぱり小 屋番変わってなかったんだ。
河村さんは僕のことを覚えていなかったが、奥さんの方は会ったこ とがあるような記憶があると言ってくれた。多少30分くらいお話 ができて、今度くるときは覚えておいてくれると言ってくれた。
もしかしたら、僕は今回が最後の南アルプスになるかもしれない。 そのことは伝えられなかった。

あの場所で水を捨てたのを、少し後悔した。やはり、ここは小河内 で泊まるのが正解だったのだ。河村さんの顔を見て、そのことに気 がついた。

少し後ろ髪をひかれながら、小河内岳をあとにした。いまひきかえ せば泊まれるんじゃないか、そんな気持ちが心の中にあった。その 気持ちは先へ進むにつれて薄れていった。

いろいろ考えていた。

僕は甲武信小屋とつながっているし、中岳の避難小屋ともつながっ ている。だから、これ以上つながっている小屋を増やしても仕方 がないことだ。だけど、…

やっぱり、1度、鳥倉からあがって、小河内に泊まってみよう。 そう思った。僕はいままで塩見に6度登っているけれど、鳥倉へ 行ったことがないのが自慢だった。だけど、1度鳥倉へいってみ よう。そう思って地図の裏面の広域図を眺めてみた。鳥倉へはど うやって行ったらいいのか、地図で追いかけてみた。

小河内をすぎると高山裏まであまりアップダウンのない樹林帯。 そこかしこにお花畑があるが、前はこんなではなかったような気 がした。注意深くなったのかな、と思っていろいろ考えてみたが、 どうやらそうではなくて、大樺沢にまだ雪が残っていることから 考えて、花が遅れていてちょうどシーズンと重なったというのが 正解のようだ。

高山裏のおじさんは僕は苦手。小屋の前でチェーンソーを砥いで いたので、こんにちは、と言ってみた。だが、返事はなし。まあ いいや、と思って通過しようとすると、「どこへ行く」ときたも んだ。
いや、中岳の避難小屋まで、と言ったら、あそこは混むから(そ んなことはないだろ)無線で連絡入れといてやるとか言い出した。 今何時だ?8時18分です。じゃあ、11時までには着くな。い や、途中で食事するんで11時は無理です、というような話をし た。
テント場の一番低いところで高度計をちらと見ると、2310mを表 示していた。まあ、いいだろう。これが3000mに変わるまで我慢、 と思って頑張る。
30分ほどで水場。ここで水を7L積んだ。多いとは思ったのだ が、たぶん今日は照り返しがきつくて登りでかなり水を飲むだろ うし、小屋でもコーヒーなんか飲みたいから少し多め、と思って 積めるだけ積んだ。ずっしりになった。多分、この瞬間が一番重 くて30キロに届いたのではないかと思う。
そして、ヨタヨタと樹林を引き回された。小広場から急な登りに 変わる。この登りが大斜面。南ア第一の難所である。

今日は4日目。そろそろバテがくる頃であると同時に、そろそろ 体が山に慣れてきて調子が上がってくる頃でもある可能性がある。 さあ、今年の大斜面はどちらと出るか。


僕は離陸地点と呼んでいるのだが、樹林が切れて静岡県の道標がたっ ているところがある。ここから一気に登るのを離陸、ここまでの樹 林帯の引き回しを滑走路で引き回される飛行機になぞらえる。
30分くらい上がって下を振り返ったところ、ちょうど離陸地点に 2人組が休憩していた。まあ、追いつかれることはないな、と思っ て上を見上げる。少しうんざりするが、うんざりするだろうという のも計算のうち。黙々と足を動かして登る。天気はよく照り返しが きついが、少し風があるのでメチャメチャ暑いということはない。

前回の大斜面は、たしか霧だった。ここでもまた僕は南では天気に 恵まれている。

うしろをふりかえってみる。意外と速いペースで登ってくる。
追いつかれるかどうかは、実はたいした問題ではない。自分の歩み が止まらないかどうかが問題なのである。自分が止まったら負け、 止まらなければいくら追い越されても勝ち。そう考えなおして、先 へ進んだ。

ようやく、上へ出るめどがついた。もちろんしんどくはないが、標 高差700mを休憩1回。意外とあっさりと登りきってしまった。裏側 へ回り込んで、中岳がみえたところで荷物を下ろしたところで、後 ろからきた2人組に追いつかれた。あまり荷物の大きくない外人さ んだった。
その外人さんも同じ場所で休憩に入ったので先へ進ませてもらう。 ヨタヨタと歩いていくと、後ろから人の気配を感じたので道を譲っ た。そうしたら、外人さんではなく、そのまだはるか下に見えた別 の人だった。えっ、だって、あそこにいたってことは、僕の3倍く らいのペースで登ってるよ。あとで話を聞いたら、鳥倉から悪沢日 帰りだそうだ。僕より4時間くらいタイムを詰めているから、やっ ぱり倍くらいのペースで歩いている。

中岳の避難小屋に着いたのが12時を少し回ったところ。小屋のま わりがずいぶんにぎわっていて、たしかにこりゃ満席だ、と思った ら、その人たちは通過の人ですぐに静けさを取り戻した。
ぐるっと回り込んで小屋番さんと顔を合わすと、ああ見覚えのある 顔だった。

もう足があがらないので少し休憩して1時前から悪沢岳を往復。3 時すこし前に戻ってきました。まだ天気がもっていました。

兎岳の避難小屋は内部がリニューアルされて、泊まれる程度には なったそうだ。それから、公式の資料に小屋の前に4,5張り可能 と書いてあったので、兎の小屋の前でテントは張ってよくなったも のと思われます。水場はありません。

一方、易老渡への道路が崩落しているという情報も得た。数日内に は開通する模様だが、現状では通れない。最悪茶臼岳から畑薙へ下 山することになる。そうすると、10年前の一番短かったときの縦 走とまったく同じルートになる。不可抗力とはいえ、それは避けた い。今回は最低でも光、最高でも光。光までいって、畑薙まで戻る か、うまく易老渡へ下山できるか。とにかく、今後の状況が流動的 なので、小屋で情報を仕入れながら歩くことになるだろう。

この日は絶景。白山もよくみえていました。そして、夕日の美しい 日でした。南の天気は僕の味方。この、一番夕景の展望に恵まれた 場所にいた日こそがまさに一番夕景に恵まれた1日であった。

20日 中岳避難小屋 停滞

もう1泊泊まっていけ、と言われたので停滞することにした。易老 渡への道路が開通するか開通しないかわからないけど、聖平までに はどちらへおりるか決めないといけない。開通が微妙なところなの で1日余裕をみた。こんなところで多めにもってきた水が役にたつ とは思いませんでした。

そうですねえ、悪沢岳を往復するという手もあったのですが、6時 くらいまでは前の日のお客さんがいるからしゃべっていらえれるし、 通過の人もいるし、どうせ12時くらいには次のお客さんが入って くる。小屋の前を陣取って景色を見ながらしゃべっているだけでも 十分時間は過ぎていくから、どこにもいかずに小屋の前に座って1 日過ごすことにした。予想通り、退屈することもなく1日しゃべり つづけることになった。

僕は、歩くのはあんまり好きじゃなくて、だから早い時間に山小屋 について、ほかの人としゃべっているのが好き。だから、しゃべる 機会がつくりやすい中岳の避難小屋は好きである。ここの小屋の前 にいて、とにかく片っ端から声をかけてみると、いろいろと話をす ることができた。

12時頃山中さんの知人の加藤さんという人がやってきたのでしば らく話し込んだ。この人は荒川小屋泊まりだというのでそれっきり と思っていたが、結局その後3日間おつきあいすることになった。 南アのいいところは、妙な連帯感があるところだと思う。小屋が一 緒になると、次の日も同じ行程になることが多いから、再び翌日も 再会することになる。おつきあいがその日限りではないのがいいと 思います。ほかの山域だとなかなかそうはいかず、一夜限りという ことになってしまいますが、南だと何日かおつきあいできるからい い。そう思います。

その後、巨大な荷物の女性が千枚からあがってきました。なんでも この後荒川小屋(中岳より徒歩1時間)ー赤石避難小屋(同3時間) ー赤石小屋(同5時間30分)と泊まり歩く超のんびり6泊7日の プラン。
けっこうしっかりした三脚を持ってきて、「荒川のカールは夕方日 があたるから夕方まで待って」とかなんとか言っていた。どんな写 真撮っているのかは見せてもらわなかったが、山岳写真は結局その 場にいるかどうかだから、相当な手練と見た。自分で1日停滞して おいて言うのもなんだけど、こういうのんびりな山行はうらやまし いな、と思った。

10年前、北岳から茶臼岳まで歩いた。そのときと、同じペースで 歩けないことを認めたくない。途中の山小屋で泊まって、その日の 行動は短くして、山でゆっくりすることに、何か負けを認めたよう で思い切れない。まだ、やれる歳なような気がしてどうにか頑張り たい。だものだから、小河内岳をスルーした。だけど、山ってそう いうものじゃない。のんびりすればするだけいい。そのことを僕は 学ばなければならない時期にきているのだと思う。

天気図は少し下り坂を報じていた。この日の夕方はガスが出てイマ イチ。これが、次第に午後早い時間に変わってきて、日中も降るよ うになる。まだしばらく大丈夫そうだが、これがいつになるかは今 後の予定の肝になりそうだ。

21日 中岳避難小屋ー赤石岳ー百間洞

4時半ころ小屋を出た。
これが最後の南アルプスになるかもしれない。もしかしたらもう山 中さんとは会うことがないかもしれない。そう思うと寂しかった。

今日は6時間30分の楽な日。

荒川小屋へはくだり。ちょっと長いな、と思ったのですが、CT通 りの1時間5分。そこから、赤石岳へののぼりかえし。ちょっと余 計なことを考えていたら、気づいたときには小赤石の上。何も大変 ではなかったですが、僕大聖寺平のあたりが好きなのです。それを、 考え事をしながら周囲を何も見ずに通過してしまうという失態をし てしまいました。
あとは少し落ちないようにまじめに歩いて赤石岳の山頂に立った。 荷物をおろさず通過して、百間平へ。今日は早くつきすぎるな、と 思って百間平で荷物をおろします。

百間平で携帯がメチャメチャに入ったので、mixiに出てみた。下界 は僕がいなくてもうまく回っているようだ。普段電話のかかってこ ない携帯に着信履歴があったのでなにか不幸でもあったかと思って メチャメチャ焦ったのだが、通話してみたら某甲武信小屋からで、 秋口の広告に僕の本名を出していいかとかいう内容でした。

百間平からくだって、今日の小屋到着もやはりは9時台。といって も、4時から歩いているわけだから、5時間はきっちり行動してい る。まあ、十分でしょう。

きのうの加藤さんと再び再会したので、その人を中心に集まった。 その後鳥倉から入った単独行のおばさん登場。このおばさんがまた 面白い人で、まず座ってワインを取り出して出してくれた。休肝日 にしようと思っていたこの日、断りきれずにお酒を口にしてしまい ます。そしたら、その後立て続けにチューハイを3本も買って、で おすそわけ。雨がポツポツと降り始めて回りに誰もいなくなっても いっこうに介することなく飲み続けしゃべりつづけて、ついにだだ 降りになるまでそこに居続けた。で、ちょうどいいときにひきあげ たね、なんていいながら、またチューハイ買って飲んでいる。それ につきあった方もつきあった方ですけどね。なんか、自分ではお酒 買わなかったのにすっかり酔っ払ってしまいました。

酔っ払った勢いで、夕食のとんかつ、頼んでしまいました。
僕、人に「百間洞のとんかつはおいしい」と説いてるけど、実際 に自分で食べたことがなかった。それではいまいち説得力がない。 やはり実際に自分で食べてみないといけない、という口実で、夕 食を頼むことにした。ホントは小屋から離れて1人で夕食をさび しく食べるのが嫌だっただけである。

で、とんかつの味ですが、少しパサッとしているかな、と思いま した。山の上で食べられるものとしては極上ですが、下界へ持っ ていったらたぶん「かつ屋」のほうがおいしいくらいの水準じゃ ないかなあ、と思います。

22日 百間洞ー聖岳ー聖平

今日も朝日を狙うので、3時すぎにスタートしたが、やはり少し 天気が下ってきているようで、朝日の撮影はダメでした。まった く止まらず中盛丸山の上に出る。一部では無駄にしんどいことを 中盛丸山などと言うようだが、意外に楽に登った。もう、最終日 パワーがかかりはじめているのだろう。

小兎でいったん荷物をおろして携帯をいじりました。うまく入っ てくれたので下界と連絡。
その次の休憩が2796付近。ここで昼食にします。
そして、もう少しあがると聖岳の山頂についた。おそらく、百間 と聖の間は第2の難所だと思うが、意外とあっけなかった。

荷物を置いて奥聖岳を往復します。
昔は、いろいろ寄った。大沢岳も寄ったし、農鳥岳に寄ったこと もある。兎の三角点にいったこもともある。だけど、なんか今回 はまっすぐやってきて、どこにも寄り道せずにひたすらまっすぐ 歩いてきた。南アルプスの歩き方は、そうじゃないと思う。少し 体力的に落ち目だけど、でも余裕があったので奥聖岳まで。

往復して戻ってきて、聖岳の山頂でまたおしゃべり。
口では「こんないい天気はないですよ」なんて言う。言うけど、 でもここ数日では一番よくない。下山は天気との競争になるだろ うか。百間洞ではずぼらして天気図をとらなかったけど、多分もっ て3日くらいだろう。明日、茶臼で泊まれば、日程を2桁(= 10日)と書けるが、下山は雨かもしれない。明日光なら日程は 9日でひと桁だが、できれば無理して光小屋までいっておくと晴 れのうちに下山できる。

靴をぬいで右足の割れた爪の手当をした。どうやら爪を割ってし まったようだ。歩くには問題なさそうだ。

聖からは余裕で下山。10時30分小屋着で、あとはおしゃべり して過ごします。出会った大半の人は椹島へ下山するので、ここ で、おわかれ。最後の夕方を過ごして、テント組は夕食も一緒に させてもらった。この日の酒飲み相手は、テント1年生。千枚か ら入ってここまでやってきたそうだ。よく頑張りました。自分に も1年生があった。そして、10年前の南アルプス1年生。つら くて、すばらしかった。あの感動を、きっとこの人は味わったの だと思う。
最近、山をはじめる人が多くなったそうだが、改めて、感動の山 と出会えることを切に願ってやまない。そして、僕にとっても、 感動の南アルプスをもう1度。おしゃべりがメインだったけど、 すばらしい山行になったと思う。

この日はくる人くる人とビールを乾杯していたら、空き缶が3本 並んだ日になった。

23日 聖平ー光岳ー光小屋

昨日の割れた爪の影響で右足は靴を履くのがかなりしんどい状態に なった。左足の爪の変色はいまのところひどくなっていないよう。 そして、かかとに靴擦れを作ったようだ。もう、大勢に影響はない。 最低でも光。最高でも光。もう、行くしかない。もう、本丸は目の 前である。足のダメージなど関係ないところまできているのだ。

4時30分スタート、とは言ってみたものの、3時30分には完全 に出発の準備が整ってしまった。やはり今日も写真撮影にして、途 中で1時間待とう、と思って3時30分にスタートしてしまった。 おかげでいい写真にめぐりあえました。南岳のあたりで絶景の富士 山と出会い、もう少しあがると小河内岳。CT2時間30分のとこ ろが2時間で到着です。肩に荷物をおいて、小河内岳を往復します。 山頂で携帯電話をいじくってみた。3本アンテナがたつのだが、送 信はできなかった。仕方ないので肩までおりてきて、テントをほし ながら1時間くらい待ってみます。2人組の足の早いパーティが通 過しました。上河内岳おすすめです、と言ったのですが、先が長い から通過だそうです。光岳なんかよりよほどいいピーク、なのです がね。
この人に、タクシーどですか?と聞いてみるべきだった、と思った のは、この人たちが通過してだいぶたってからでした。

次に通過した1人の人にタクシーどうですか?と聞いてみたら、易 老渡に車を置いてあるので乗せていってくれるという。ありがたく 便乗させてもらうことにした。

茶臼との分岐をこえた。もう光岳まで行くしかない。行くしかなく なった。

茶臼岳にどこかの小屋番らしき人。神様は僕の10周年記念山行を 嘉して、最後まで極上の天気を用意してくれた。展望は1周だが、 展望よりも子供が気になる。携帯電話の入るところを探していた。 小屋番が携帯電話をいじくっているので一緒になって携帯をいじくっ てみた。なんとか微妙につながった。
電池の目盛りが1つ減った。携帯電話も、いよいよ最後。

そして、

たぶん、これが最後の下界との連絡になる。「茶臼岳、今日光小屋、 明日下山」と連絡した。明日、下山である。はじめて、山を離れる 日を実感した。
山よりも子供の方が気になる。もう、下界を気にかけずに思い切り 山を楽しむことはできない。これが世帯を持つということなのか。

最後の1日。もう、最後のラストスパート。光へ向かって駆け抜け た。もう休憩らしい休憩は取らなかった。もう4時間以上、水の1 滴も口にしていない。

そして、登山道はしんどい登りに変わった。一気に行く。

計時で残り1Hという時に静高平に出た。水場は考えられないくら いよく出ていた。ここで出ていない可能性も考慮して、聖平から2 L余計に水を持ってきたのは完全に無駄だった。

そして、光小屋への木道を歩く。
光岳のピークはとんでもないピークだと言われる。僕も百名山とし ては報われないピークだと思う。だけど、南アルプスの南端として、 光岳のない南アルプスはいかにも締まらない。そして、茶臼あたり から見るとすごくいい形をしているし、茶臼からの縦走路になかな かいいところがある。イザルなんかも素敵だと思う。要は、楽しみ 方なのだと思う。
山頂にたって、ぐるっと1周見えれば、それでよかった。何もみえ なければ残念。ただそれだけでしかない山をやっている人にとって は、光岳ほど報われない山はないだろう。百名山でもなければ訪れ ることはない。それもまたいい。

だけど、

この木道の道は、とても美しいと思う。
僕は光岳は意外と好きな方の山だ。


ほどなくして小屋についた。受付で、何も言わなくても遠くから来 たのがバレた。昨日は聖平、とだけ書いたのに、ずっと天気が良く てよかったですね、と言われた。
顔の焼け具合を見てわかってしまったのだろうか。

そう、北岳からやってきた。雨具を使わない山行だった。

小屋に荷物を置いた。余裕だった。足取りは軽かった。軽快な歩き で光岳へ向かった。

3,2,1、そして、今、光岳の標識にタッチ。
前回のゴールは標識を抱きしめた。だけど、今回はそんな感動はな かった。
この山行は、全力ではなかった。全力を出し切った山行ではなかっ た。だんだんと実力がついているのか、やりかたがうまくなったの か。ただ単に、この位の山行では感動ができなくなってしまっただ けなのか。それは、わからない。

だけど、辛かった.苦しかった。ダメージも負った。ズボンはビリ ビリになった。汗だくになった。日焼けもした。手の甲はもう火脹 れ間近になった。見た目だけは一人前にボロボロになった。

そして、

越えてきた山々を思い返してみた。どの山にも自分の汗と足で踏ん だ美しき思い出。試練と憧れ。そして、



やはり、南アルプスは辛くて、しんどくて、かっこいい!と思った。


小屋の前で談笑。前回はビールの缶が並んだが、今回は誰もあけよ うとしない。シラフでしゃべることの方が主体の会になった。少し 持ち込みのお酒をもらったが、ほとんど休肝日に近い状態になって しまった。そのままみんなと夕食をはじめたが、小屋の夕食がはじ まる段になってあわてて解散になった。

なかなか眠れなかった。山で眠れないことはほとんどないが、この ときは睡眠薬を持ってくるべきだったと思った。
明日は下山。車の回収もあるから、長い1日になる。寝ておかない といけない。

やることはやった満足感はあった。前に、5年10年というスパン でくることはないだろうと書いた。そして実際、再訪まで8年の期 間を要した。次は、…

たぶん、次はないだろう。だけど、僕はこの山行を胸に抱いて、今 後の半生を生きていく。


さようなら光岳。



その言葉を最後に、明日の活力を生む眠りへ落ちた。




24日 光小屋ー易老渡


今日は下山する日。山を離れる日はいつも切なく悲しい。
少し早く支度をして、同行者の準備が整うのを待った。

最後の朝日が登った。南の天気は僕の味方。涙が出るほど美しかった。

寒かった。この縦走中はじめて感じた寒い朝だった。

それじゃあ、またきますね。そう言って小屋番とわかれた。もしか したら、今度の山行が最後の南アルプスになるかもしれない。その ことは、やはり口に出すことはなかった。


エピローグ

易老渡は今年はじめての夏の暑さだった。じりじりと照る太陽の下 吊り橋を渡って、林道におりたった。乗せてくれる人には申し訳な いのだが、僕が運転するわけにはいかないので乗せてくれる人1人 便ヶ島まで歩いてもらって車を回収してもらい、僕らは荷物番。乗 せてもらって、通り道の飯田駅でおろしてもらいました。
お礼については、僕はだいぶ迷ったのですが、一緒に乗せてもらっ た人と、「タクシー代の4人割の半額(1500円)づつくらいでどう でしょう、あと僕が縦走成功の祝儀1000円出すんで」みたいな提案 をしたのですが、
同行者けっこうヒッチハイクが得意なんて話をしてたんで、その人 がお金を払ったことがない現金よりもものの方がいいなんて話になっ たので、ヒッチハイクってそういうものなのかなあと思って、食事 代と入浴代を出しただけで終わってしまいました。
ガソリン代の半額くらい持ってあげればよかったなあ、と思ったの ですが、けっこう大きな車だったんでガソリン代も勇気が要るし、 なんとなく言い出せずに駅までいってもらっちゃって、ちょっとな んか後で後悔しています。

十分なお礼ができず申し訳ありません。本当にありがとうございました。

15時56分の飯田線にのって、20時11分韮崎駅。ずっと南ア ルプスの稜線を眺めていました。

車の回収は韮崎駅からタクシーを頼んだ。甲府駅からたのむと韮崎 駅から頼むより多分1000円くらい高くつくと思います。


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 175  写真  おごうち避難小屋と富士山
 176  写真  塩見岳
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 179  写真  荒川中岳
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 183  写真  悪沢岳から富士山
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 189  写真  中岳避難小屋の様子
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 191  写真  悪沢岳
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 193  写真  赤石岳
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 217  写真  富士山
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 243  写真  赤石岳
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 249  写真  赤石岳から富士山
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 251  写真  百間洞山ノ家
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 255  写真  百間洞山ノ家の夕食
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 257  写真  テント場の様子
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 264  写真  聖岳
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 271  写真  兎岳避難小屋。内部はリニューアルされました
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 285  写真  聖岳
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 289  写真  上河内岳から富士山
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 304  写真  奇岩竹内門
 305  写真  茶臼岳
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 308  写真  茶臼岳から富士山
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 344  写真  これでおしまい


最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php




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