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8/9 小河内岳避難小屋〜前岳〜悪沢岳〜中岳避難小屋

今日はプラティパス2つを満水にして大斜面をのぼるしんどい日。

普通の時間に小屋を出発して、高山裏の小屋のわきを通る。小屋番は毎年おなじ 場所に座って、おきまりの「どこからきた」ときたもんだ。で、つぎは、「どこ へいく」だ。中岳の避難小屋、って言ったら、混みあうから無線で予約しとい てやる、って、なんか2年前とまったく同じ展開。2年前もそんなこといって、 結局ろくにお客様入らなかった経験があるから、もう話半分に聞いて、はいはい そうですか、と内心で思っておきながら、よろしくおねがいします、というわけ ですよ。

今年は登山道わきの水場が出てないという。正確には出ているが水量が極めて細く て水を汲むのに尋常でない時間がかかるそうだ。
「水わけてやろうか」、という。どの位必要なんだ、と聞かれた。1泊するにして も最低1Lは必要だ。「1L」と答えると、「1Lはわけてやれねえなあ」と言っ て500ml出してくれた。そのあと、もう500わけてやろう、とかいって、 結局都合1Lわけてもらった。

苦手と思っていた高山裏の小屋番も、ちょっと話してみるといい人だ。
ありがとうございます。今度は泊まりできますからね。なんて挨拶をして、また 南の宿題を増やしてしまう。


水場へやってきた。確かに水量は極めて細いが、出てないことはない。少し水を 積み増すことにした。30分くらいかけて、小さいペットボトル2つと新しい方 のプラティパスに水を満たした。

水のない小屋で連泊の予定なので、もう少し積み増しておきたい。古いほうのプ ラティパスにも少し足しておくか、と思ってとりだすと、なんと若干入っている はずの水は空だった。そして、ザックの中は水浸し。どうやら、プラティパスか ら水が漏っているようだ。穴があいていたこと自体大変なことだが、気づかなかっ たらもっと大変なことになっていた。

穴のあいている水筒には水は入れられない。小屋で1泊1Lわけてもらえるから、 節約すればたぶんプラティパス1つでも足りるはずだ。この量で、あきらめて大 斜面へ向かうことにした。
想定より2.5L軽いというのもあるが、重量的にはさほどしんどくはない。


大斜面といえば、照り返しがきついという専らの噂である。いままではずっと曇 りできていたが、今日は晴れ。そうとう暑いことが覚悟される。長袖を脱いで歩 くが、樹林の中でもう汗が垂れる。こりゃそうとうしんどいな、と思ってへこた れる。小広場をまだかまだかと、耐えながら登る。そして、目の前に木の標識が 見えた。さあ、ここからがしんどいぞ、と思ったら、いい風が吹いている。むし ろ樹林の中よりも楽なくらいだ。

上を見上げた。
ここからの荒川前岳は何度も見ているが、改めて見るとやはり高い。

一緒に水場に到着して休まずにいった人は、どうやら大斜面の中間くらいにいる らしい。1時間くらい離れているはずだから、思ったより近い距離にいる。追い つけるのか?追いつければこの山行初の実荷の人の追い越しになる。ちょっと首 をふった。いや、ここは淡々といこう。登り切ることだけを考えればいい。

足元を見ながら登る。ときおり、見上げる。高いか?うーん…


ベラボーに高いとは思えないなあ…

ここで、苦しいと思って、ふと見上げたときに、青空にどこまでも高く聳える峰、

それが南の魅力。



と書こうと思って出発したのだが、意外となんでもない。
もう、慣れてしまったのだろうか。
しかも、前の人と、あきらかに間を詰めている。

いよいよ実荷で前の人を追い越す日がきたか。
ちょっとはりきって追いかけるが、残念ながら追いつくまでには至らず、実荷で 前の人を追い越す日は明日以降に持ち越し。

一歩踏み誤ると1000m以上おっこちるガレのふちを歩かされて、中岳の避難小屋 にやってきた。そして、昨日にひきつづいて、「やあ、またきたね」の日。

通常、三伏峠→高山裏→荒川小屋、の行程だが、僕の行程は三伏峠→小河内岳避→ 中岳避、の変則的な行程。変則的な行程なのは、ひとえに、いきつけの山小屋に 泊まるため。今回も前回にひきつづいて、中岳連泊の予定でやってきている。

連泊の予定でやってきているので、悪沢岳は明日でもいい。
だけど、悪沢岳へ向かうグループが目の前を通過したので、それに便乗して悪沢 岳へ向かった。出発したときは真っ白だったけど、少し青空が広がってきます。 赤石岳は残念ながら雲の中でした。

戻ってきたら、すぐ夕食、すぐ就寝の慌ただしい時間でした。


8/10 中岳避難小屋〜赤石岳〜百間洞

結局、連泊は見送った。やはり少し水が心もとない、というのと、妻から、早く 帰ってきてねというメールが入っていたので1日予定を詰めた。同日に夜叉神に 入った人とは、多分これで会うことはできなくなるだろう。

水、必要なら置いていきますけど、と言って、1L置いてきた。

中岳から荒川小屋に向かって下る。絶好の快晴になった大聖寺平を歩く。

ここは、南でいちばんいいところ。左手に赤石岳を見ながら、軽い登り。 いやー最高だね、の声しか出ない。
やがて、斜度を強めると小赤石岳の山頂へ出る。赤石岳の山頂だと勘違いした 人はご苦労様。もう、何度も通っている場所だから騙されたりはしない。

赤石岳山頂へはもうひと登り。

赤石岳山頂の避難小屋に頼まれものをしたので、ふだん素通りする赤石岳の 山頂の避難小屋へ立ち寄る。手紙だけだとアレなのですが、水がピンチだそ うなので、小屋用にと3L背負った。
こちらもちゃんと話をするのははじめて。
「ここはよく通るんですけど、通過するばっかりなんですよ」
「通過するなよ」
「ここもよさそうですね」
「よさそうじゃなくていいんだよ」
「テントならどこでも張れるから先いけよ」
「いや、インターネットで記録公開するので、ヘンなところにテント張ると あいつはまたあんなところにテント張ったなんて言われるから」
「なんだよ記録公開するなら先に言えよもっと優しくしたのに」
とまあ、この小屋番もなかなかおもしろい雰囲気。
若干水はあまり気味だったので、
「もう水1本置いていきますか」
と言ったら、
「どうせ明日雨降るからいい。登山者は水を大事にしたほうがいい」

とのこと。
残念ながら、南の天気は僕の味方。
明日の雨はたいしたことがないとみた。

コーヒー頼もうかと思ったのだが、水が厳しいとのことなので見送り。

そろそろ下界が恋しいんですよ、とんかつが食べたいんですよ、なんて言っ たら、受付時間が決まっているから早く行け、と言われたあたりを潮に先 へ進むことにする。

赤石岳からは急な下りを経て裏手の岩がゴロゴロしているところへ。落石 には注意が必要ですが、快調にいく。だが、ちょっとのぼりかえしはしん どい。
百間平から大下りで百間洞山ノ家に到着する。
夕食どうするかなあ。とんかつは食べたいが、とんかつならあと数日我慢 すれば、かつ家で半額で食べられる。ちょっと節約しないといけないし、 逆に食べるものはあまり気味だ。うーんどうするかな、見送りかな、なん て考えながら受付をする。

百間洞山ノ家で受付をすると、「食事はどうされますか」ときた。
いきなり「食事は」と聞かれたので、惰性で「夕食だけお願いしようと思 うんですけど、テントなんですけど」と答えてしまう。
あ、テントね。もう、デフォルトで小屋どまりに見られる年齢なんだろうか。

というわけで、テントでとんかつだけ頼んだ。夕食の時間まで小屋前で会話。 ときおり微雨で寒い。

で…5時間近く待って、夕食ですよ。
とんかつとそばですからね。久しぶりにごはんのおかわりなんかしてみたり して、満腹になったらテントに戻り寝込んだ。


8/11 百間洞〜聖岳〜聖平

今日は雨予報の日。上の方はガスっているようだが、小屋周辺はガスの下に あるようだ。
例によって百間をヘッドライトでスタートする。4時を若干回っていたので、 まあ、日の出には間に合わないだろう。
歩き始めて、45分ほどで東海パルプ社有林の看板の立った尾根を乗り越す ところに出てくる。カメラを構えてもいいのだが、先行者が休憩していたの で止まらずに通過する。

もう15分ほどで中盛丸山と大沢岳の鞍部に到達する。風が強い。いまのと ころ降ってはいないが、予報は雨だからいつ雨がきてもおかしくない。ガス は勢い良く上がってくる。天気は下っているように見える。

先を急ごう。

中盛丸山をこえたところで、ちょっと歩く方角に自信がなくなった。こんな に下ったっけ。何度か歩いているはずなのに、いや、何度か歩いているはず だからこんな場所を歩いたかどうか自信がなくなった。コンパスを出そうか。 逡巡しているうちに記憶のある場所に出てきた。

小兎の道標のないピークをこえて、大登り。ここを登りきれば兎岳。少しし んどい思いをするが、もう苦しくない。
兎岳の山頂は真っ白だった。1回目の休憩に入り、荷物を下ろす。ここから 聖岳のとりつきまでの間が、どの位崩壊しているか不安だった。塩見ののぼ りにせよ、北荒川ののぼりにせよ、かつて経験をしたことがないほど崩れて しまっていた。ここも実は危険な状態になっているのではないか。

だが、ここはほぼ一昨年どおり。杞憂だった。ただ、若干ガレのふちを回る ので注意が必要ではある。その程度であった。

聖岳の基部にとりつけば、あとは1時間40分、黙々と足を動かし続ければ 山頂にたどりつく。聖の山頂はニセピークの裏側だが、ほどなくして最後の 3000m峰、聖岳を踏んだ。
降ってはいないが、周囲は真っ白で、知らなければどこが降り口かもわから ないほどだ。

誰もいない。

感動はない。立ち止まらずに下る。下りかけて、ふと気づいてケータイをい じる。登山道のどまんなか。上にも下にも、誰にもいない。下の方は小聖の むこうがわに数人見えるが、下っているようだ。

塩見にしても、聖にしても、なんなんだろう。今年の人の少なさは。


ざれた斜面を下って行くと、天気はくだりどころか、晴れ渡ってくるようだ。 あとで話を聞いたら、今日聖岳に登った人は絶好の天気に恵まれたそうで、 すこし早まった、と思った。

小聖から薊畑を経由して聖平へ入る。

例年聖平へくると、いよいよゴール、という気持ちになるのだが、今年はそう いう気持ちにならなかった。光岳を踏んだ翌日は通常下山である。だが、今年 はそうはいかない。横窪沢で1泊しないといけない。そこを、指折り数えてあ と何泊、とやるわけである。あと、光小屋、横窪沢の2泊。この、横窪沢の1 泊が、今年、ゴール間近、と思わせない理由なのだろう。


光のほうから来た人に聞いてみると、静高平の水は出ていないとのこと。
明日は聖から水を持っていくようだ。

明日は曇時々雨の予報。明日こそは、雨になるのだろうか。
北岳からきたという百間洞から同行のおじさんは、明日茶臼小屋に泊まって、 明後日空身で光岳をピストンするという。これだと、水場の心配は要らない。

だけど、僕、それが好きじゃないのだ。



光小屋こそが末端の小屋。ここに泊まってテントを張ってこそ、はじからは じまでの縦走だと思うのだ。

僕は光小屋を第一にする旨を告げる。ただ、天気があまりにも悪かったら、 明日茶臼泊まりにして、翌日光をサブザックで往復、といった具合にしよ うと思った。

相当雷が鳴っている。明日もこんな調子だったら、行動ができないようだ。


この日寝る時、はじめてかかとが痛んだ。ハートの痛みほどではなかった。



8/12 聖平〜上河内岳〜茶臼岳〜希望峰〜光岳〜光小屋

朝、雨が降っていなかった。昨日のおじさんも、今日はわりと天気がいいので 光小屋まで行くという。再びヘッドライトでの行軍。真っ白な木道の上はホワ イトアウトしそうな雰囲気である。だが、南岳に出る頃になるとガスが取れた。

南岳の少し手前で朝日があがる。聖岳に光があたった。
南の天気は僕の味方。この完全な雨予報の中で、晴天をつかまえることができ た。

ちょっといやなガレのふちを通過する。いやといっても、北荒川付近ほどでは ない。そして、カールののぼり。この登りもさほどしんどくはなかった。

上河内岳は縦走路から外れ空身で往復15分。もう7度目だし、行かなくても いいかあ、と思ったのだが、ガスが取れたので行ってみる。

やはり、いい。このピークを踏まないのは、絶対損だ。

上河内岳から、聖岳におわかれする。


またくるよ、南アルプス。



あがったら、すぐ下山を開始する。山頂は再びガスに包まれた。
もう、主要なピークはおしまい。危険な場所もおしまい。あとは光岳まで淡々 と歩いて、最後のピークを踏むだけだ。


奇岩竹内門を通過するころには、本格的に晴れ上がってくる。茶臼岳は晴天の 中にあった。
茶臼岳でケータイをにぎりしめる。はじめて、下山の言葉を使った。
今日光、明日横窪沢、明後日下山。

下山というものが、現実的なものとなった瞬間であった。
独身のときのように、きままにはいかない。だけど、それでいいと思う。

仁田池をすぎ、木道を歩く。

光岳はこのあたりがいい。
つまらんピークだという人がいるけれど、光岳はきちんと歩けば歩いたなりの ものを返してくれるピークだと思う。易老渡あたりから往復したら、よほどつ まらなく見えるだろう。だけど、僕はこのピークが好きだと思う。

光小屋へ到着して、荷物を下ろす。あとは、空身で15分歩くと、ゴールがやっ てくる。そして、樹林の中をめぐった。

いよいよ、ゴールにやってきた。例によって、道路っぱたにあるようなそっけ ない場所の標識であるのは先刻承知である。この標識にたどりついたとき、僕 はいったい何をするだろうか。抱きつくだろうか。キスだろうか。

いよいよ光岳の標識が見えてきた。3m,2m,1m。今ゴール。そこで写真 を撮った。それで終了。なんだろう、この感動のなさは。

今年はもう1泊ある。横窪沢に泊まらないといけない。まだ、ゴールしたとい う気分にはなれなかった。

光小屋に戻ってきたところに百間から一緒だった北岳からのおじさん登場。先 に踏ませていただきました。早くいってきて、一緒に祝杯、と言ったら、先に 飲ってくれ、ということで、先にひとりで祝杯。


実感のない祝杯になった。
まだ、明日は下山ではない。そのことが、妙に頭にこびりついていた。


天気図を見せてもらった。ちょうど気圧の谷に入っているようで、等圧線が縦 に通っている。大荒れにはならないだろうが、よくはない予報だ。


8/13 光小屋〜横窪沢小屋

朝、ヘッドライトをつけようとすると、つかない。ついに電池が尽きたかと電 池を交換するが、やはりつかない。電池の接触が悪そうだ。いじくりまわして いるうちに、あかりはついた。それで、トイレへ向かうと再びあかりが消える。
イライラして振ってみたら、バンドがとんでいって行方不明になった。

これで、完全にヘッドライトは使えなくなった。


テントをあけたら、星空だった。2年前の光小屋を思い出してみると、小屋の 裏手からガス巻く富士山が見えたものだった。今年もイザルの朝日を狙ってい たのだが、残念ながらガスの中。今年もまたイザルは見送る。
別に早く出る必要はないのだが、4時30分のスタート。ヘッドライトはバン ドがないので胸のポケットにはさみこんで使う。

もし、このトラブルが1日早ければ、光岳は諦めて下山していただろう。

ヘッドライトでガレの下りをくだりきり、くだりきったあたりでライトを消す。 三吉平あたりで、先行していた隣のテントを追い越す。もう、コースタイム通 りでの行動が当たり前となった。

易老岳へののぼり、希望峰への登りは少し苦しむが、距離だけ長いコース。

希望峰で、同じ日に夜叉神から入山して光までいくという2人組に出会う。 ぴったり1日遅れでやってきていたようだ。
「お先に踏ませていただきました」と挨拶して別れる。少し迷ったのだが、 名刺切らしていたので、名刺は渡さずに別れた。その後のつながりはないだ ろう。


帰りの足を急ぐ。仁田池の手前あたりから少し雨まじりになってきた。そし て風が強い。もうすぐ稜線を離れる、と思って少し頑張ってみるが耐えられ ず茶臼岳をこえたあたりで雨具を取り出して着込んだ。

茶臼岳の山頂は真っ白。ケータイを取り出して最後のつもりの連絡をした。 あさって早い時間に下山する旨を伝えた。

茶臼岳から茶臼小屋分岐までの距離は風雨に叩かれてつらいものだった。ガ スで何も見えず、距離も長くて分岐を見落としてしまったのではないかと思っ た頃見覚えのある展望板にいきついた。
分岐をおりてしまえば、もう風の影響はほとんどない。茶臼小屋のわきをお りて、横窪沢小屋に急降下。10時くらいに横窪沢小屋についた。

気持ち降っているが、降っているというほどは降っていない。

帰りをどうするか、まだ逡巡している。

帰りは井川駅まで井川観光協会のバスに乗ろうと思う。そのためには、井川 山岳会の山小屋(=聖、横窪、茶臼、光のいずれか)に1泊しないといけな い。

だが、小屋泊のお金は払いたくないし、今日下山できるものなら下山してし まいたい。

誰か、車できている人が井川駅までのせていってくれないか、と淡い期待を していた。だが、登りの人はやってくるが、下りの人はやってこない。1人 やってきたが、トレランっぽい感じで僕はついていけないので乗せてってく れ、とは言い出せなかった。

その登りの人もひととおりはけて、小屋の前には誰もいなくなる。

昼のラーメンを作って、コーヒーも飲んだ。もうやることはない。


百間から一緒だったおじさんは、今日下山して茶臼小屋が下で経営する民宿 に泊まるという。横窪沢は通過するはずだ。最後のあいさつは、「僕も60 すぎて北岳から光岳まで縦走できるように頑張ります」にしようと思ってい た。
百間からのおじさんを見送ってから小屋の受付をするか、と思っていたのだ が、少し時間も過ぎてきた。下山しても最終の井川発には間に合いそうにな い時間になった。遠距離を乗せてくれるとしても、新静岡ICまで、という のであれば話は別だが、静岡駅までのっけてくれ、なんて都合のいいはなし は無理である。必然的に今日は横窪泊まりということになる。


あとは素泊まりにするか、2食にするか、だが、自炊は外でやってくれ、と いうことだ。雨まじりだからどう考えても自炊はしんどい。せっかくだから 2食つき、ということで、2食で申し込んだところでおじさん登場。

茶臼の民宿はお盆期間でいっぱいでとれない、ということで、今日は横窪に 泊まって明日観光協会のバスで井川駅へ行く。

ということで、もう1泊、一緒に行動することになった。


こうやって、一緒に行動してくれる人ができるのも、南の魅力だと思う。



結局、この日の泊まりは2人だけ。あまり混み合う小屋はもちろん嫌である が、お盆期間中に2人だけという小屋もなんだかなあ、と思った。




8/14 横窪沢〜畑薙第一ダム〜白樺荘 …甲府

出発の時間を逡巡するが、なるべく早い時間に下山の報告をしたいので、朝食 を食べたらすぐに下山を開始することにする。



朝から雨。しっとりした樹林を下る。ところどころガスがあがって幽玄になる。
長袖に雨具なので汗が垂れる。だが、そんなことはどうでもいい。
稜線を歩いている人には申し訳ないが、すばらしい、の一声だ。

だいぶ南は歩いたつもりであったが、こんな南があったとはおもわなかった。

申し訳ないが、南の天気は僕の味方。



そして今、僕が山に何を求めているのか、はっきりわかったような気がした。 なぜ甲武信岳なんていう、パッとしない山へ通う原動力があるのか、それがはっ きりした山行だった。


ちょっと油断して足元を滑らせる場面があった。もう、そこで下山。こんなと ころで怪我をしたらバカらしい。


ずっと、急な下りを下っていく。やがて、見えてくる大井川の清流も、今日は 雨で少し濁っている。鉄の階段をおりきるとウソッコ沢の小屋の下。水場。最 後の、南ア最後の水場だ。手ですくって飲んでみる。


いよいよ、南アともおわかれ。僕の夏が終わる。

少し沢筋を歩いて、つり橋をわたったところからヤレヤレ峠へののぼり。100m ばかりのぼりかえすと、あとは畑薙大吊橋までは20分のくだり。計時できっ かり20分後に大吊橋をわたる。向こう側にのぼりの登山者を一人、待たせて しっかりした足取りで林道におりたった。

お互い、雨具。完全防備の。


最後の会話。2言3言会話をかわして別れた。

畑薙大吊橋までバスがやってきて、ここで拾ってくれるのではあるが、バスが くるのは2時間40分後。この場所ではケータイは入らず、しかも雨の中待ち ぼうけることになる。畑薙ダムまで歩くことにした。


畑薙ダムの水量はきわめて少ない。天気に恵まれた山行だった。最後の慈雨に 合羽を濡らしながらトボトボと2人で林道を歩く。

南の天気は僕の味方。雨が降らなければ見られないであろう、ガスにけぶる山々 を見あげながら、

そう、見上げながら、

別れを惜しむかのごとく、誰もいない、静かな林道を往く。
前回は、再び来ることができる予感がしなかった。


今回は、再びがあるような気がする。
まだ下界ははるか遠くにあるように思えた。



沼平で下山届を書いた。これで、南とはお別れ。

畑薙ダムまで歩いて、ケータイが入らない。ケータイが入らないので白樺荘 まで歩くことにした。

臨時駐車場に臨時の登山届提出所がある。

沼平で下山届は出しているので、通過してもよかったのだが、同行者が立ち 寄ったので、僕も再度下山届を書くことにした。

夜叉神から〜

と、顔を上げるとそこにいたのは見たことのある人だった。昔同じ山岳会だっ た人。遅くまで待ってれば静岡まで送っていってくれる、とのこと。

世の中にはいろいろな、「なんとかなる」があるものだと思った。

とりあえず、白樺荘まで歩く。
白樺荘まで歩いたものの白樺荘でもケータイが入らなかった。早い時間に下 山するとメールしてあったので気が気ではなかった。

10時半に白樺荘に入って、入浴、食事をしたあたりまではよかったが、帰 りの方法を算段する。

白樺荘は最近新築されてしまった。昔のひなびた感じがよかったが、やはり 商業ベースにのせたい、とのことなのだろう。

17時くらいまで待てば静岡まで送っていってくれる、とのことだが、万一 すれ違ってしまうと1日のロスになってしまうし、うまく送ってもらえたと しても最終の身延線に乗れるかどうか不安だ。それに、早く下山の報告をし たい。
送ってもらえるとのことだが、この方法は今回は見送ることにして、自力で なんとかすることにした。



せっかく横窪沢に泊まったから、観光協会のバスで井川へいって、金谷へ出 よう。

そう決めたら、慌てて荷物をまとめて、14時10分にバスの前に並んだ。 15時10分発のはずのバスは14時20分に出発して井川駅でおろされた。

井川の駅で料金を眺めると、一部代替バス運行、と書いてあり、しかも富士 まで4千円とか表示されている。代替バス運行だと乗り継ぎに間に合うかど うか不安だし、煩雑な乗り換えが不安だ。料金もちょっと厳しい。

井川の駅を15時55分頃最終が出発するのだが、その5,6分前に自主運 行バスがやってくる。このバスは基本的に登山者は利用してくれるな、とい うバスであるが、このバスにあきがあれば、上落合経由で静岡駅へスムーズ に出られる。このバスが使えるかどうか、ダメモトで聞いてみよう。ダメだっ たら井川から電車で帰ればいい。

バス停の前で待った。

バスは3分か4分ばかり遅れてやってきた。

「申し訳ないんですけど、乗せてもらってもいいですか?」

予想通り井川で登山者1名下車で、余裕で乗ることができた。このバスで上 落合へ出て、しずてつバスに乗り換える。

いちばん後ろの座席のエンジンの上に座らされ、激しい振動に遭う。

眠れない。長い1日だから、少し寝ておきたかった。
少し考え事をした。

また静岡の山を歩きたい。
また、南アルプスを歩きたい。


市街地へ入るにつれて混雑は増し、静岡駅で降ろされる。
もう、そこに山の雰囲気はない。

一緒に乗った4人の登山者もバラバラに散る。

僕は、もはやふりむくこともなく、街の雑踏に消えた。



8/15 下山

甲府駅でおりたときには雨はあがっていた。
バス待合所のベンチでうたた寝することになる。雨が降っているとつらい。
1時になって、2時になって、細切れに30分位寝ただろうか。

それで十分だ。
最終日だ。足の痛みと、思い出でおなかがいっぱいになっている。

南の天気は僕の味方。バス停で一晩過ごすのに十分な天気を与えてくれた。

そして、

夜叉神へ向かうバスの中で、ただ1度だけの朝焼けを南は見せてくれた。


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  聖岳
   
  上河内岳から聖岳
   
  奇岩竹内門
   
  亀甲状土
   
  茶臼岳方面
   
  茶臼岳から上河内岳
  茶臼岳山頂
  仁田池 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
  ささやかな祝杯
   
   
   
  横窪沢小屋
   
   
   
  ウソッコ沢小屋
  ヤレヤレ峠
  畑薙大吊橋
   
   
   


最終更新日: 2016/07/22 by htmltophp.php




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